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Final Stage 第7章:愛をするということ5

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2025-12-20 10:09:35

***

「実はばあやには、穂高さんと付き合ってることを暴露していて……」

施設の廊下を歩きながら、穂高さんにばあやのことについて説明をしていた。

大学進学に反対された俺を応援すべく、両親の代わりに後見人となってくれたお蔭で、大学に通えた上にアパートが借りることができた。

すっごくお世話になっているからこそ隠し事をしたくなかった俺は、ばあやに穂高さんとの付き合いを早いうちに告白していたのだ。

同性と付き合っているという話を聞き、最初は驚いた表情を浮かべていたばあやだったけれど、写真を見せたら妙に納得してくれたっけ。

『千秋、ずっと仲良くして戴けるといいわね』

そう言って笑いながら応援してくれたことが、とても嬉しかった。

「勿論、反対されただろう?」

「それが……そうでもなくて」

微妙な表情で歩いていたら、ばあやのいる個室前に到着したので、軽快に扉をノックした。するといきなり音もなく扉が開いて、ニコニコした可愛らしい皺くちゃの顔が出迎えてくれた。

「待っていたわよ、千秋。それと穂高くん!」

80過ぎの動きとは思えない早さで俺たちの腕を素早く掴み、部屋の中に引き入れる。

「あ
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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   愛しさのかたち4

    「愛菜ちゃんは愛菜ちゃんなりに、なにか思うことがあるんだよね? それを、パパに伝えに来たのかな?」 小林と喋っているときよりも、竜馬は声色を上げて、愛菜に訊ねてみる。「……あのね、パパがいないのはおかしいって、仲のいい友達に言われたの」 ぼそぼそ呟くように告げた、愛菜の言葉を聞いて、竜馬は小林と目を合わせた。眉間に皺を寄せた小林は、どこか話しづらそうにしていたので、あえて自分から口火を切る。「それ、俺も言われたことがある」「竜馬も?」 さっきよりも、ちょっとだけ明るい口調になった愛菜を見て、竜馬は柔らかくほほ笑んでみせた。「うん。おまえの父さんは、どこに行ったんだって聞かれた。だけど、答えられなかったんだ。どこにいるか、わからなかったし」「…………」「愛菜ちゃんのパパは、一緒に暮らしていないけど、こうやって逢えるだろ? そのことを、お友達に伝えてみたらいいんじゃないかな」 父親と母親がいつも傍にいる友達に、そのことについて、話をしてみても、離れて暮らす事情がわからない以上、納得するとは思えない。だけど人によって、家族のかたちはいろいろあるという現実を、愛菜の事情を使って説明してみるのも、一つの手なんじゃないかと竜馬は思った。「そうだよね。こうやってパパに会えることを、まりあちゃんに伝えたらいいんだ」「愛菜がクラスで仲のいいお友達は、まりあちゃんっていうのか?」 愛菜の呟きに反応して、小林が優しく語りかけた。「うんっ。席替えしてから、隣になってね、私が消しゴムを忘れたときに貸してくれたり、まりあちゃんが忘れたときは、貸したりしたんだ。髪の毛がすっごく長くて、とってもキレイなの」「愛菜ちゃんだって、髪の毛は長いほうじゃないのかな?」 ポニーテールをしている愛菜の毛先は、ちょうど肩の高さだったので、竜馬は長いと指摘した。「まりあちゃんのほうが長いんだよ。背中の全部が隠れちゃうの」 話し合いを始めたときとは一転、明るい雰囲気がリビングを包み込む。 愛菜の弾んだ声に導かれるように、小林と竜馬も日常のことを口にした。竜馬の話から普段聞くことのない、小林の様子を聞いて、愛菜はお腹を抱えて笑い、小林はここぞとばかりにむくれた。 三人三様で盛り上がる時間は、あっという間に過ぎていく。「愛菜、明日も学校があることだし、これ以上は遅くなるから、

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    *** 三人でアイスを食べたまでは、雰囲気はとても良かったと、竜馬は記憶している。そして今現在、正座している、竜馬を挟んで展開されている様子に、顔を引きつらせるしかなかった。まさに、お手上げ状態だったのである。 というか、両腕をふたりに確保されている時点で、竜馬は動くことすらできなかった。「愛菜、絶対に帰らない! 竜馬のそばにいるもん!」 むくれ顔をそのままに、愛菜は言い放ち、縋りつくように、竜馬の左腕をぎゅっと抱きしめる。「そんなワガママ、パパが許すはずないだろう!」 父親の威厳を振りかざしつつ、恋人のように竜馬の右腕に、自分の腕を絡ませた小林。「あ、あのぅ……」「パパ、ズルいよ。竜馬をひとりじめ、しようとしてるでしょ!」「そんなことはない。愛菜がママのところに帰ったら、竜馬も自分の家に帰るんだから」 自分を中心に、引っ張り合いをする親子を前にして、竜馬は対処できずにいた。どちらかの肩を持てば、間違いなく片方の機嫌が悪くなるのが、容易に想像できるだけに、どうにも口を挟めない。「竜馬、おうちに帰っちゃうの?」「ぅ、うん。明日も仕事があるからね。帰るよ……」 言いながら、右側にいる小林の顔を見たら、もの言いたげなまなざしとかち合った。(これは俺の作った料理を食べたあとで、俺のことも食べようと思ったのにっていうのが、なんとなーく滲み出てる視線だな。目は口ほどに物を言うから――)「愛菜、ママと喧嘩したことはわかったけど、他にもなにかあるんじゃないのか?」 みんなでアイスを食べながら、今回の来訪について、小林と一緒に上手いこと聞き出していたので、大まかな理由はわかっていた。 竜馬自身も母親と喧嘩したとき、なかなか家に帰りづらかった過去があったので、愛菜の気持ちを理解していただけに、他の理由があるなんて、思いつきもしなかった。 父親として、有能な姿の小林を垣間見ることができて、竜馬の頬が自然と緩む。「りっ理由なんて、そんなものないもん」 ぷいっと、顔を背けてむくれる愛菜を見て、竜馬はふとしたことが閃いた。「愛菜ちゃん、もしかして隠してることは、パパやママに関係のあることじゃない?」 竜馬が指摘した途端に、ちょっとだけ愛菜の表情が変わった。困惑と悲しみの両方が、見え隠れする感情を目の当たりにしたからこそ、小さな右手を両手で包み込んで

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    ***「ただいまっ!!」 聞き慣れた声と共に、勢いよく開く扉を見て、竜馬は愛菜と一緒に笑い声をあげた。台所に仲良く並んで、洗い物をしている最中だった。「パパ、おかえりなさい。愛菜ね、苦手だったお野菜が食べ――」 台所から振り向いて話しかけた愛菜の体を、小林はしゃがみ込んで、なにも言わずに、ぎゅっと抱きしめる。「パパ? 愛菜の両手濡れてるから、パパに触れないよ?」「ひとりでここまで来て、怖いことはなかったのか?」「平気だよ。だって、パパと何回も一緒に来てるもん」「愛菜ちゃん、これで手を拭いたらいいよ」 万歳したまま、抱きしめられている愛菜を見かねて、竜馬がタオルを手渡した。「済まなかったな、竜馬。愛菜の面倒を見てくれて」「いえ……。びっくりはしましたけど、愛菜ちゃんと話ができて、結構楽しかったです。手に持ってるのアイスですよね? 一旦冷凍庫に入れておきますね」 竜馬は、愛菜の来訪に動揺しているであろう、小林を慮り、手首にぶら下がったままのビニール袋を、手に取った。「竜馬、本当にいろいろ悪かった」「いいんですって。それよりも、お腹が空いているでしょう。愛菜ちゃん、パパのオムライスにケチャップをかけてくれるかな」 小林に抱きしめられた状態の愛菜の頭を、竜馬は撫でながら指示を出した。「うんっ。美味しくなるように、にっこりマーク描いてみるんだ!」 愛菜は両腕を使って、小林の体から脱出し、嬉々として竜馬の左手を掴む。仲のいいふたりの様子を目の当たりにして、小林は呟かずにはいられなかった。「なんだろ、いろいろ複雑な気分」 その呟きは竜馬の耳には届かず、台所で交わされるにぎやかな声に、かき消されてしまったのだった。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   愛しさのかたち

    残業で遅くなるという小林に、腕によりをかけた手料理を振舞おうと、恋人の自宅に向かった竜馬の前に、見知らぬ女のコが目に留まった。そのコの足元には、ピンク色のランドセルと、手提げの鞄が置いてあり、明らかに誰かを待っている様子だった。もしかしてと思いながら、竜馬は女のコに近づく。「君、ここで、なにをしているのかな?」 マンションの扉に背をあずけて、立ちつくしているその女のコに合わせて、膝を折りながら目線を合わせると、おどおどしながら竜馬を見た。「……お兄ちゃん、だれ?」「ここの家の人と同じところで働いてる、畑中って言います」 女のコを怖がらせないように、にっこりほほ笑んで答えた。「私は上田愛菜です。パパに逢いに来ました」「パパって、小林さんに?」 竜馬の問いかけに、女のコは真顔をキープしたまま、首を縦に振る。緊張感を漂わせる面持ちから、警戒されていることが、嫌というほどわかった。 小林に娘がいることを、事前に知っていたため、そこまで驚くことはなかったが、突然の来訪に竜馬自身、焦りを覚えた。言葉で騙しがききそうな、幼稚園児ならいざ知らず、小学生となると、そうもいかない。「と、とりあえず中に入ろうか。学校が終わってから、ここに来て、ずっと待っていた感じなのかな?」 ポケットから鍵を取り出して開錠し、中に促そうと試みる。「お兄ちゃんはどうして、パパのお家の鍵を持っているの?」 鍵を開けたことにより、背もたれにしていた扉から離れて、竜馬を見上げる愛菜は、不思議そうな表情で小首を傾げた。(――娘として、そこのところが、やっぱり気になるよなぁ)「あのね、お仕事でいつもお世話になってる小林さんに、お礼をしようと思って、晩ご飯を作ってあげるために、鍵を預かっていたんだ。ちなみにお母さんは、愛菜ちゃんがここにいることを、知っているのかな?」 家に入りやすいように、ランドセルと手提げの鞄を持ってあげながら、小さい背中を押す。愛菜は俯いたまま、なにも言わず、竜馬と一緒に玄関に入った。 黙りこくったことで、母親に内緒で、小林に逢いに来たのがわかった。あえて質問を止めて、違う話題を持ち出すべく、愛菜に優しく語りかけてみる。「ねぇ愛菜ちゃん、愛菜ちゃんがここに来たことを、小林さんに電話してもいいかな? 会社の帰りに、なにかお菓子でも買って、帰って来てもらうため

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    「心一郎さんにもはめてあげる」「ぉ、おう。頼む」 竜馬の問いかけに小林はひどく照れながら、ずいっと左手を差し出した。その手にやんわりと触れて、右手に持った指輪を薬指に押し込んだ。 お揃いの指輪がそれぞれの薬指で煌めく様子を見てほほ笑んだら、小林の左手が竜馬の左手を掴み、ぐいっと躰を引き寄せられた。頼もしくて大きな腕の中に閉じ込められるだけで、安心感にすべてが包まれていく。 顔を上げると引き寄せられるように、愛しい人の顔が近づいてきた。捕まれている左手をぎゅっと握りしめながら、そっとまぶたを閉じる。 数秒後に重ねられた唇。浜辺でしたとき同様に小林の唇はカサついていたけれど、自分とキスしていることをが実感できるそれに、竜馬の胸が疼いてしまった。 誓いのキスのはずが互いに感極まって、離れられなくなっていた。「んっ……」 鼻にかかった竜馬の甘い声が教会内に響き渡って、ハッとした。誰もいないとはいえ公の場での行為に目を合わせながら赤面しつつ、掴んでいた手を放して距離をとった。 妙な沈黙が余計に羞恥心を煽っていく――「竜馬、永遠の愛を誓うのと同じくらいに誓ってほしいことがあるんだけど」 ボソッという感じで告げられた小林の言葉で、竜馬は渋々顔を上げた。「お前の悪い癖が、自分の中にすべてを抱え込んじまうことなんだ」「そうですね……」「これからは嬉しいことや悲しいこと、つらいことも全部、俺に打ち明けてほしい。一緒に分かち合いたいから、どんなことでも」「一緒に分かち合う。これから……」 自分の持つ強い気持ちは人を傷つけてしまうものだという刷り込みが竜馬の中にあるからこそ、誓ってほしいと強請られた瞬間は躊躇してしまった。 でもそれを分かち合いたいと告げられた途端に、その考えは消え去った。大きな躰同様に広い心を持つ小林なら、自分の気持ちを易々と受け止めてくれると分かったから――「分かりました。心一郎さんに俺の全部を預けるんで、よろしくお願いします」 竜馬の答えに小林は満足げに頷き、右手を差し出してきたので迷うことなくその手を繋いだ。「あっ、小林さんっ、忘れ物!」 歩き出した足を引き留めるべく竜馬は繋いだ手を引っ張り、祭壇の上に置きっぱなしにしていた指輪のケースと仕事用の帽子を手にした。指輪のケースはポケットにしまい込み、帽子を格好よく被ってみせ

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   しあわせのかたちを手に入れるまで10

    「竜馬、俺を愛してくれてありがとう」 背筋をぴんと伸ばした小林が、自分に向かい合う形でいきなり語り出した。制服の裾を引っ張ったりスボンを意味なく叩いてから、慌てて脇正面を向く。 目の前にいる小林は正直格好いいとは言えなかったが、天井からのスポットライトが顔に陰影を与えている関係で、二割増しにイケメンに見えた。「おまえが傍にいるだけで強くなれることを、何度も実感させられた。ここぞというときに手助けされるせいなのかもしれないが、それでも俺は前よりも強くなれたと信じているんだ」「小林さん……」「これからも変わらず竜馬、おまえを愛していく。永遠に誓うから、ずっと傍にいてくれ」『はい』と一言すぐに返事をしたいのに、うまく言葉にならない。嬉しい気持ちがこみ上げてきて、自然とそれが涙になって表れてしまった。「傷ついた俺の前に現れたのがおまえで良かったと思う。傷ついた過去があるからこそ、包み込むような優しさに救われた。出逢ってくれてありがとう」 浜辺で指輪を渡されたときは自分からプロボーズしてしまったというのに、それを帳消しにするような言葉を告げる小林に、ずっと頭が上がらない。「心一郎さん、俺は……ぉ、俺もずっと愛していきます。傍にいさせてくださぃ……」 涙を拭いながらやっと口にしたセリフを、小林はきちんと聞くことができただろうか――心根の優しい大好きな小林の名前を呼ぶことができただけで、嬉しくて堪らない。「ふふっ、誓いの愛の言葉をしっかりとこの耳に頂戴しました。私がふたりの証人になってあげる。お幸せに!」 安藤の声に顔を上げて横を向いたときには、扉の向こう側に消えていた。「さて、ウルサイのが消えたことだし指輪の交換するか」 祭壇に置いてある指輪のケースから中身を取り出し、小林は竜馬に手を差し伸べる。目の前にある大きな手に、そっと左手を差し出した。 「おっ、今度はサイズがぴったりだな」 スムーズにはめられる指輪を見て、子どものようにはしゃぐ小林を窘めたかったけど、それをせずにじっと薬指を眺める。 緩すぎずキツすぎることのない光り輝くプラチナの指輪は、まるでふたりの関係を表わしているみたいだ。

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